第1章 SeeD-49

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「どしたの?」 そんなセルフィを物珍しそうに眺めていたのか、セルフィは普段の表情に戻って、俺に語りかける。 「いや、なんでもない。そうだ、なんでもない……」 ふと、そこで会話を止めようとしたが、急に一つの言葉が思い浮かんだ。 「それにしてもセルフィは――」 「おいっ! スコール!!」 ゼルの声が俺の声を打ち消す。 「大変だぜ! あれを!」 早口と共に指されるゼルの指先にはドール市街の中心部である広場が―― 「あれは、犬……」 確か、市街広場に待機していたサイファーのしびれを切らした野良犬。 「あいつ、気づいていないのか……!」 野良犬は俺が最後に見たときと同じように噴水近くを歩き回っている。 「あのままじゃ……」 「想定外とはこういう事を言うのだな……」 飼い犬ならまだしも、野良犬には逃げる場所など無い。一つの街に張り付き、そこで暮らし、朽ちていく。 <飼い犬は誰かについて行けばいい。だが、野良犬――捨て犬はどこにも行けない> 「ゼル、セルフィ。先に行ってろ!」 それだけ言うと、俺は広場近く、つまりは野良犬の方へと駆け出した。 何をやってるんだ俺は……? 「早く逃げろ!」 半分怒鳴り付ける勢いで野良犬へ叫ぶ。野良犬はびっくりした様子で、俺を見る。 「判らないのか? 逃げろ!」 そこまで捲し立てると流石にといった感じで慌てて広場から走り去って言った。 方角的には港の真逆。つまりは俺たちからも正反対となる。機動兵器の目的は俺たちなのだからこれで安心だろう。 しかし、何をムキになっている俺は……? 野良犬の一匹放っておけば良かったのでは?  否、勿論俺も幾ら野良とはいえ目前の動物を見捨てるのは白状だとは思う。だが、今は自分自身にも危険が迫っているのだ。 優先するのは自分なのでは……? 現に今俺は、こうして二人に遅れを取り、機動兵器はぐんぐんと俺に向かって近づいている。 「今は逃げる事に専念しろ」 そうだ、まだ助からないと決まった訳ではない。希望とか奇跡等とか言う言葉を大安売りの如く、信じるのは好きではないが諦めるよりかはましだ。

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