第1章 SeeD-52

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パーティの喧騒を嫌って、俺は会場の一隅に佇んでいた。 そんな俺に声を掛けてきた者がいる。 「キミが一番かっこいいね」 振り向くとそこには、一人の少女が立っていた。 年齢は俺と同じくらい。艶やかな黒髪と、円らな瞳が印象的だった。 来賓の一人か?しかし、そうは見えないが・・・ SeeD就任パーティは、新人SeeDを祝福するためだけのものではなく、新人のお披露目、セールスも兼ねている。 それゆえパーティには、各国の指導者や軍関係者がゲストとして招かれる。 彼女もそうした来賓、おそらくはその令嬢の一人なのだろうが、それにしては、 彼女はどこか雰囲気が違っている。何というか、場慣れしていないような感じだ。 「知り合いを探してるの。それまでつき合ってよ」 そう言って彼女は、ハイヒールのおぼつかなげな足取りで、こちらに歩み寄ってきた。 よく見れば、シックな白いパーティドレスの着こなしも、どことなくぎこちない。 彼女、何者なんだ・・・ 「!」 会場を明るく照らしていたシャンデリアが、ふいにその光量を低く絞った。 タイミングを同じくして、楽団の奏でる楽曲が、スローテンポなものに切り替わる。 「あ、この曲!ねぇ、知ってる?」 「・・・ああ」 舞踏会用にかなりアレンジされているが、この曲なら知っている。 俺が生まれる少し前に流行った曲だ。タイトルは確か・・・ 「アイズ・オン・ミー。私、この曲にはちょっと思い入れがあるの。ね、踊ってくれない?」 彼女は俺の手をひいて、ダンスフロアへと誘なおうとした。 「いいからいいから。ね?」 来賓に失礼な真似はできないが、今の俺はそんな気分じゃない。 俺は無言のまま、彼女の手を振りほどいた。

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