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ティファとマリンはミッドガル5番街スラム跡地にある、もとは教会だった廃墟を訪れていた。
星痕に苦しむデンゼルを置いてくるのは気が引けたが、ティファにはどうしてもここで確かめたい事があった。
マリンはというと、教会の奥のほうにある花畑に嬉しそうに走りよっていった。
スラム街の跡地にある花畑。それがこの教会を、特別な場所にしている由縁だった。
ミッドガルのやせ細った大地に、10年以上も前から花が咲いていると言う事自体がすでにこの上なく珍しいことだ。
それに、2年前のあの日、メテオの直撃でミッドガルが崩壊した時も、この花畑は生き延びていた。
しかし、復興に奔る人々の目には、この小さな奇跡は映っていない。
ティファ自身、この教会に来たのはほぼ2年ぶりだった。
ティファはざっと教会の中を見渡し、探していたものをすぐに見つけた。
それは、花畑の傍らに散らばっている、人がそこで寝起きしたという痕跡。
それは、自分達の許を去ったクラウドがここを寝床にしていたという痕跡。
クラウドがここに来ていると、ティファは以前から人づてに聞いていた。
でも、こんなに近くにいただなんて、思いもしなかった。
ティファがそれに歩み寄ると、マリンもついてきた。
「クラウドはここに住んでるの?」
彼女もティファと同じ事を考えたらしい。
「そう…みたい、だね」
しかしティファは、これがとても「住んでいる」とは言えなかった。
荒れた床に、申し訳程度に敷かれた寝藁。小奇麗に巻かれた寝袋。
その傍らには金属製の箱――中身は恐らく、彼がユフィから預かったマテリアだろう。
マリンが箱を指差して「何?」と訊いたが、ティファは曖昧に微笑んで開けさせなかった――と、
これまた申し訳程度に置かれた木箱。その上には欠けた食器が数個置かれていた。
ここに垣間見られる、クラウドの素朴で孤独な暮らしを思うと、ティファは胸が痛くなった。
しかも、それだけではなかった。
マリンが、木箱の近くに落ちていた、使い古された包帯を見つけたからだ。
「デンゼルと同じ!クラウドも病気なの?」
黒い膿の跡が残された包帯を見て、マリンが叫ぶ。
それは、紛れもなく、クラウドが星痕症候群に冒されている証拠だった。