二節 砂塵2

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オアシスの町カイポまで、残す所わずか。幌をかけた荷車の中で、セシルは休息を取っていた。 傍らで、ミストの生き残りの少女が、目を閉じて横たわっている。 あの日、少女が巨人を呼び出した後、何が起きたか彼の記憶ははっきりしない。 気がつくと夜が明けていて、彼は気絶した少女を抱え、土砂に半ば埋まっていた。 どうにか這い出し、周囲の様子を調べて、バロンへの帰路が閉ざされたことを知った。地滑りが起きて、洞窟の入口が塞がれてしまったのだ。 姿の見えないカインも気がかりだったが、少女の身を考えると、一刻の猶予もない。 砂漠を渡るか、無理にでも山を越え、バロンに引き返すか。迷った末に、セシルは前者を選んだ。 余裕を持たせたとはいえ、水も食料も、バロンに戻るまでの用意しかない。山中で調達できるかもしれないが、肝心の道がなくてはどうしようもない。 それよりは、砂漠に向かったほうが、まだ可能性があると考えたのだ。 交易で栄える町と、その住人を潤すオアシスが、あちこちに点在している。自力でたどり着くのは無理でも、キャラバンを見つければ、助けを求めることが出来る。 カインへのメッセージを残すと、少女を背負って、セシルはミストの地を後にした。 星を読み、記憶を頼りに最寄の町を目指して歩くこと2日。結局道を外れかけていたセシルは、通りがかったビッグスの隊に拾われた。 キャラバンを襲った魔物を退治したことで、少しは借りを返せたようだ。 「君にもいつか……  いや、ムリだね」 巨人の召喚が、大きな負担となったのだろう。少女はあれ以来、一度も眼を開いていない。 町についたらまず、彼女を託す場所を探そうとセシルは心に決めていた。 出来るものなら、この手で罪を償いたい。だが少女のほうは、セシルに側にいられたくないだろう。 それに、バロンとの戦いに巻き込むわけには行かない。 いつか全てが終わったら、そして少女がそれを許してくれたら、改めて彼が面倒を見るつもりだった。 ずいぶんと先の話になる。今のうちに一度謝っておきたいが、相手が眠ったままではそれもかなわない。 結局、キャラバンがカイポの門をくぐるまで、少女が目を覚ますことはなかった。

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