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その日は、月が出ていた。寒々しい夜だった。
忘らるる都。その中心に位置する湖に、カダージュ達はいた。
なんの因果か、かつて彼女が葬られたその湖の傍らに。
「兄さんが隠してたのか…」
半ば有頂天になりながら、誰にともなく言うカダージュの足下には、ロッズの持ちかえった「手土産」が置かれていた。
そう、クラウドのマテリアだ。
「ライフストリームから生まれた力…」
ほくそ笑みながら、頑丈そうな箱からマテリアを取り出し、顔にかざしてまじまじと眺める。
星の知識と力を凝縮したその結晶は、淡い美しい光を放っている。たぶん、下手な宝石よりも綺麗だ。
その輝きを後ろに立っているヤズーとロッズにも見せてやろうと振りかえる。と、あるものが目に入った。
小さい女の子が、ロッズに肩の辺りを押さえつけられるようにして立っていた。
それはロッズの手柄の、ちょっとしたおまけ。
星痕は持っていないようだが、ロッズ曰く、「おもしろい遊び相手」なのだそうだ。
名前は…そういえば知らない。
とりあえず、にやりと笑いかけてやる。怖がると思ったが、きつい目つきで睨み返された。
なるほど。確かにおもしろい。その度胸が気に入って、カダージュはもう少し脅かしてやろうと思った。
「これで僕達も新たな力を…」
呟くと、右手に持っていたマテリアを左の手首にあてがう。
と、マテリアがそのままカダージュの腕に埋没し、丸ごと取り込まれていく。
大きさにして握り拳ほどもあるマテリアが、だ。
背後から息を呑む音がしたが、カダージュは無視してマテリアを腕に押しつけ続け、ついには完全に埋めこんでしまう。
腕の中に取り込まれてもなお、マテリアは淡い光を放ちつづけている。
その光景は、彼らが生身の人間ではなく、思念によって創り出された存在である、何よりの証。
少女を見る。流石にこれには驚かされたらしい。いい気味だ。
それに満足して、カダージュは大声で「驚いたかい?」と言い、湖の方へ向き直る。
湖を挟んだ対岸、そこにはヤズーの持ちかえった手柄が、数十人の子供達が集まっていた。
どの顔も一様に、カダージュの光る腕に半ば驚き、半ば怯えた様子で立ち尽くしている。
ますます満足したカダージュは、再び口を開いた。