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それから彼は、兄弟とともに岩と霧の世界を練り歩いた。
なんのあても根拠もなかったが、歩いていった先に母がいる気がした。
母さんに会えば、どうやって星に復讐すればいいか教えてくれる。母さんさえいれば、僕たちはなんでもできる。
彼らはそう信じて疑わなかった。
どれほど歩き続けただろうか。
そろそろ足が疲れてきたというときに、靄のむこうから、風とは明らかに違う音が聞こえてきた。
「ツォンさん!見てください!」
それは音ではなく声だった。しかし、彼はその声が妙に耳障りだった。
兄弟たちも同じだったのだろう。苦々しげに顔をしかめている。
「…あたりだな」別の声がさっきの声に応える。この声も耳に障った。
「…気持ちワルイっすね」最初の声が、蔑んだような響きを伴った。
彼は妙に胸騒ぎがした。その声の聞こえる方へ走った。兄弟たちも急いで追ってくる。
『いーから急げよ、と』また別の声が聞こえてきた。これまでで一番耳障りな声だった。
そのすぐ後、靄の向こうに声の発信源が見えた。
そこにいたのは彼らと似通った、しかし根本的な何かが違った姿の生き物だった。
こちらに背を向け、地面にかがみこむようにしてなにやら腕を動かしていたが、
やがて四角い箱のようなものを小脇に抱え、立ち上がった。
その抱えられたものを見た瞬間、彼の神経のすべてが逆立った。
あのちっぽけな箱に閉じ込められ、運び去られようとしているのは―――
間違いない。彼らの母だ。
―――やめろ―――
彼は全身を怒りの炎が駆け巡るのを感じた。思考の一部がスパークする。
―――それは、僕たちの母さんだ―――
兄弟たちも彼と同じ状態だった。拳を握り締める音と、異様なほど大きい歯軋りの音が聞こえる。
―――母さんを、放せ!!―――
そこで彼の思考は途絶えた。考えるよりも先に、体が動き出す。
甲高い咆哮を上げ、カダージュはふたりの人間に背後から襲いかかった。