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セブンスヘブンの窓からも見えた満月が、鏡のような水面に映って輝いている。
辺りでは幻光虫の澄んだ光が飛び回り、漂う空気は氷のように冷たく、透明だった。
それらは白い輝く木々とあいまって、忘らるる都の幻想的な雰囲気をよりいっそう強く演出していた。
「本当に…誰も助けられないな」
生い茂る太木の一本の根元に座り込み、クラウドは自嘲気味に呟いた。
マリンを。デンゼルを。カダージュ達にさらわれ、操られた子供たちを。助ける事が出来なかった。挙句の果てに、あと一歩で殺されそうだったところを自分が助けられる始末。
…なさけない。
そんなクラウドの呟きを、助け出した本人は黙って見下ろしている。クラウドは彼を見、尋ねた。
「ヴィンセント…何が起こってるんだ?」
「…私はここによく来る」
ヴィンセントと呼ばれた男はぶっきらぼうなほど短く答えた。その抑揚のない口調は、2年前から変わらない。
血のように紅いマントを羽織り、左腕には金のガントレットという風変わりな出で立ちの彼は、火のような瞳をしていた。
「だからカダージュ達のことは見ていた」
ヴィンセントは続けると、クラウドの傍らまで歩み寄り。
―――クラウドの左腕を、思いきり掴んで握り締めた。
「!!」
ひきかけていた痛みがまた戻り、クラウドは反射的にその手を振り払おうとした。が、ヴィンセントは握る力を緩めず、「…星痕は」と口を開いた。
「体内の免疫系システムの過剰な働きが原因らしい」
ここでやっと手を離すと、ヴィンセントはあたりを歩き回り、後を続ける。
「免疫の仕組みはライフストリームのそれと似ている。私たちも体の中にライフストリームのような流れを持ち、それが侵入してきた邪悪な物質と戦うわけだ」
邪悪な物質…?ずいぶんと抽象的な言いかただ。クラウドがオウム返しに聞くと、ヴィンセントは頷いた。
「そう。”それ”の正式な名前は決まっていない。そればかりか、その性質は細菌やウィルス、はたまた寄生虫といったどの病原体の分類にも当てはまらないそうだ」
だだし…、と一旦言葉を切り、彼はクラウドを真正面から見据えた。
「いくつかの特徴が、ジェノバ細胞のそれと酷似しているらしい」