四節 Eternal Melody6

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進むにつれて気温はさらに下がり、氷室さながらの鋭い冷気が、吐く息を白く染める。 磁力の洞窟と呼ばれる場所が、かつて、何者かの暮らす都市であったことは間違いない。先へ進めば進むほど、痕跡は増えていった。 平らな床。鹿角を模した石造りの蜀台。木製の櫃に入った古い貨幣。つる草のレリーフを施した扉。 魔物を寄せ付けない結界が張られた部屋も、いくつか残されている。 そのうちのひとつで、セシルたちは休息を取っていた。 魔法陣の上にテントを張り、楽な姿勢で干し肉や木の実を齧る。くつろいだ輪の中心に、ヒソヒ草が置かれていた。 「さっきは驚いたよ。幽霊かと思った」 『すまないね、説明しそびれてしまって。  でも勝手に殺さないでくれよ』 ヒソヒ草の向こうで、苦笑している気配がする。 ギルバートの体調が、確実に良いほうへと向かっていることは、その声の調子からも窺えた。 『まさか、本当に歌の通りにやるとは思わなかったよ』 「そんなに変かな?  町の人にも呆れられたけど」 森のどこかにいる黒チョコボを見つけ、空を飛んで磁力の洞窟へ向かう──その手伝いを頼んだとき、しばらく大口を開けていたロドニーの顔をセシルは思い出した。 あまりに深い森で囲まれているせいだろうか。どうもトロイアの人間には、野生のチョコボを乗りこなすという発想がないらしい。 野生の群れが存在しない砂漠育ちのギルバートには、彼らと同様、セシルたちの行動が大胆に思えるのだろう。 『いや。……ただ、少し残念かな。  洞窟へ行く方法を探すなら、今の僕でも手伝えると思ったんだけど』 「なんの、その気持ちだけで十分じゃよ」 「ここは我々に任せて、ギルバート殿は養生に専念されるがよかろう」 『……ありがとう。そうさせてもらう』 二人の気遣いで、空気がいっそう和やかなものになる。 それを、苛立たしげな声が一瞬で粉砕してしまった。 「ようやく分かったか。貴様の浅知恵などに用はない」 「……テラ!  おぬしいい加減に」 「ぐずぐずしてはおれん。そろそろ先へ進むぞ」 さすがに見かねたシドを振り払い、テラは早々に腰を上げた。

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