四節 Eternal Melody7

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「しかし、テラ殿の魔力も、まだ完全では……」 「ふん!  だらだらと無駄話をしているよりはよほど良いわ!」 とは言うものの、テラの顔色は良くない。 ただでさえ、魔力の回復は体力のそれよりも時間がかかる。一行の中で最も休養を必要としているのは、間違いなくこの老いた賢者だ。 「ここからが本番なんだ。ちゃんと休んだほうがいい」 やはり休息を勧めたセシルに向かって、テラは盛大に鼻を鳴らした。 「なにを呑気なことを!  そもそも、捕らわれているのはおぬしの恋人ではないのか。  ここでモタモタしている間に、何かあったらどうする!?」 「それは……」 「私はもう御免じゃ。オクトマンモスの時の様なことはの」 虚空を睨み付けたテラの言葉が、セシルの気持ちを動かした。 「分かった。行こう」 「良いのですか?」 「言い出したら聞かないよ」 尋ねるヤンは知らない。かつてダムシアンへ通じる道を塞いでいた魔物の名前を。 そのとき、戦いに備えて、一晩の休息を提案したのはテラのほうだったということを。 もしもあの時、先を急いでいれば── 『侮ってはいけない。  ダークエルフの魔力は、クリスタルのせいで増大しているんだ!』 病床から、ギルバートが警告を発する。 だが彼の助言を、今のテラが聞き入れるはずはなかった。 飾り柱のような岩の列の間を抜け、奥へ。貝殻や貴石を象嵌したひときわ見事な扉の向こうが、クリスタルルームになっていた。 壁も床も、淡く輝く水晶のような物質で作られている。中央には鈍色の祭壇。クリスタルの間近へ続く正面の階段には、色褪せた毛氈まで敷かれている。 かつてミシディアやファブールで見たそれと、まったく同じ構造だ。こんな場所に神聖な台座が存在する事実に、セシルは驚きを隠せなかった。 階段の上で、痩せこけた影が振り返る。 蟷螂を思わせる細い手足に、ぼさぼさの白髪。薄い緑色の肌。黄色く濁った目ばかりが目立つ、しわに覆われた顔。まるで枯死した雑草のようだ。 クリスタルの輝きを背に受けて、筋張った体の輪郭を、黄金の光が縁取っていた。

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