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「待って下さい!」
風変わりな謁見を終えようとした大神官に、ギルバートは食い下がった。
「彼らは……僕の友人なんです!
見捨てないでください!」
情に訴える亡国の王子を、大神官は無言で見下ろしていた。その両目に初めて、痛ましげな光が宿る。
「クリスタルは自然の力の象徴。その恩恵は、全ての生命に等しく注がれます。
私たちのものでなければ、トロイアという国の持ち物ですらありません。
ただ預かっているに過ぎないのです。遠い先祖から、はるか先世の子孫へ向けて」
「……分かっています。
ですが……」
「あなたは良い方です。ギルバート殿下。
ご友人方も、良い人たちなのでしょう。
それでもあれは、個人の情を理由に扱って良いものではありません。
火のダムシアンの王統を受け継いでいる方ならば、骨身に染みておりましょう」
穏やかに諭され、もはやギルバートに返す言葉はない。
「お暇いたします」
会釈を残し、大神官は去っていった。ついに一言も発することのなかった七の姫が、表情を殺したまま付き従う。
『……ギルバート……』
「生きているとは思わなかった……」
窮地に陥っているのはセシルたちの方だ。だというのに、ギルバートの口から溢れ出たのは、あろうことか自己弁護の言葉だった。
「みんな死んでしまったと思ったんだ!
もうバロンは止められないと、だから、だからせめて、僕にできることをしようと……」
干上がった舌が、唇が、聞くに堪えない言葉を紡ぐ。
これが自分の本性なのか。絶望の中で、ギルバートはせめて誰かに止めて欲しいと願った。たったそれだけのことさえ、一人では成し遂げられないから。
けれどセシルもヤンも、シドも、情けない言い訳を遮ろうとしない。
『言ったであろう。貴様の知恵など、はじめから当てにしとらんわ』
冷え切った賢者の言葉が、はじめて彼の望みを叶えた。