四節 Eternal Melody13

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『……すまない』 「君が悪いんじゃないさ」 気落ちしていない、と言えば嘘になる。それを気取られないよう、セシルは努めて前へ進む方法を見出そうとした。 しかし、仲間たちが彼を諌める。 「もう眠れ、セシル」 「テラ殿の言うとおりだ。  今後どう動くにしても、体調は万全にしなければ」 「考え事なら、この天才シドに任せておけ!」 口々に言われ、セシルはしぶしぶ寝袋に潜り込んだ。いい夢は見られそうにない。 確実に生きて戻るなら、ひとつだけ手がある。諦めるのだ。ローザのことも、カインのことも。何もかも。 ……そんなこと出来るはずがない。 パロムやポロム、これまで出会った人々から寄せられた厚意にも、まだなにひとつとして、満足に応えていない。 なにより。 ”ローザは……カインのところにいます” バロン城で、ローザの母アイリスに娘の行方を問い質されて。咄嗟にそう応えた瞬間、広がった安堵の空気。 ただセシル一人の胸に燻っていた感情は、騙すような真似をした、罪悪感だと思っていた。 それだけではない。今なら分かる。 ローザを守るのはセシルの役目だ。カインでも、他の誰でも、あってはならない。 だから、証明しなければならないのだ。テラがギルバートに求めたもの。アイリスがカインに期待したもの。 伴侶を守り抜く力。 ──ID……EM URODO ITAU A……ROT── ──UKU…… KUSH O…… NEHA……OCH── かすかな歌声を聞きつけ、セシルは耳を澄ました。 「ふん、無駄なことを」 やはりギルバートだ。耳が慣れると、別の低い濁った音も聞き分けることが出来た。あの錆びた竪琴だろう。 「気持ちはありがたいが……」 「これではのう……」 普通に話す分には、だいぶ良くなっていたように感じたが。ギルバートの歌声は、古くなった革紐のように伸びやかさを欠いていて、どんな力も秘めていそうには思えなかった。 「いいから、お主はとっとと寝るんじゃ」 テラが向けてきた杖の先端から、灰色の靄が噴き出す。スリプルの魔法はたちどころに効果を発揮し、無理やりセシルを眠りの中へ引きずり込んだ。

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