四節 Eternal Melody14

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その後、エリスはしっかりこき使われた。仕事を放り出し、立ち聞きに現を抜かした罰である。 野菜の皮むき、床磨き、空き部屋の掃除に続いて彼女が押し付けられたのは、両腕いっぱいの洗濯物だった。 裏に回り、大きなたらいに水を張って灰を混ぜた中に汚れ物を浸す。凝りはじめた首や肩をもみほぐしながら、エリスは布に洗濯液がしみこむのを待った。 そこへ、さらなるシーツの山を抱えて、同僚のミオが応援に現れる。 「手伝いに来たよ~」 どさり、と投げ出された大量のリネン。エリス一人の作業量は、どう考えても増えている。 「ほらほら、天気がいいうちに済ませちゃお」 ミオはスカートの裾をたくし上げ、素足をざっと水で洗うと、洗濯物を足で踏んで揉み洗いを始めた。 エリスも彼女に倣い、たらいの中に入った。少しだけ温まった水が、酷使された足に心地いい。 「ふんふーふーふーんふふーん♪」 リズミカルに上下する膝に合わせて、ミオが鼻歌を歌い始めた。 祭のたびに奏でられる、精霊たちに捧げる旋律。 古の言葉で綴られた歌詞を諳んじることが出来るのは、ごく一握りの巫女たちだけだが、ゆったりとしたメロディーは、2歳の子供でも知っている。 「ずいぶんとご機嫌ね」 「そういうわけじゃないけど、さっきから二階のほうで歌ってる人がいてさ。  ずーっと聞いてたから、つい」 「二階?  ……楽司様ではないのね」 「男の人の声だったよ。それに、あんまり上手じゃなかったし。  誰だろうね?」 お気楽なミオの返答で、異国の王子の思いつめた横顔がエリスの脳裏によみがえった。

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