四節 Eternal Melody19

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ギルバートの歌は、目覚しい効果をあげた。 「ナンダ! コノ、フカイナオトハ!」 ダークエルフは身悶えし、せめてもの抵抗とばかりに、枯れ枝のような指で尖った耳を押さえている。 その尋常でない苦しみようは、全滅をも覚悟の上で再戦に臨んだセシルたちが、拍子抜けするほどだった。 「そうかそうか気に入ったか!  ホレホレ! たーっぷりと聞かんかい!」 小刻みに震える妖精に向けて、シドがヒソヒ草を突き出す。ダークエルフは悲鳴を上げて、台座から転げ落ちた。 「木槌の仇じゃー!  ホレホレ、ホレホレ!」 「グ……ゲゲゲ! ガゴゴ……」 あれほどセシルたちを悩ませたダークエルフが、起き上がることも出来ず、芋虫のように床の上を這いずり回る。 調子付いたシドは、軍旗のごとくヒソヒ草を振りかざし、その後を追い回した。 「技師殿も、案外根に持ちますな」 「道具は職人の命、ってよく言ってたからね……」 「ふん、見苦しい!」 テラの表情は苦々しい。セシルも、さすがに悪乗りが過ぎると感じた。 敵の力は、まだ消えていない。竪琴の力を借りて、一時的に抑えているに過ぎないのだ。 演奏が続いているうちに、次の手を打たなければ。 「今のうちに止めを刺すか?」 「……いや、クリスタルさえ手に入ればいい」 土のクリスタルのせいで、ダークエルフの魔力が増大している。ならばそれを取り戻せば、恐れる必要はない。 甘い、と言いたげな視線をテラが送るが、セシルはどうも、ダークエルフの命まで奪う気になれなかった。 半分は、眠りに落ちる直前に聞いてしまった話のせいだ。残る半分はシドのせいだが。 「それでいいだろう。  クリスタルさえなければ、さして害のある存在ではないようだ」 賛同してくれたヤンにうなずきを返し、セシルはクリスタルを目指して足を進めた。 そこへ、シドに追い立てられたダークエルフが体当たりしてくる。ただの偶然か、少しでも邪魔をしようとしたのかは分からない。 セシルは足元を一瞥し、邪魔な妖精を無雑作にまたぎ越した。 次の瞬間。 ヒソヒ草から、ぶつ、と異様な音が響いた。

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