四節 Eternal Melody23

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鈴のような声があった。割れ鐘のような声があった。中にはひどく、調子外れのものまであった。 賑わう酒場の一角で。夕風の吹き渡る岸辺で。あるいは河に浮かべた小舟の上で、幼い弟妹の手を握り。 セシルが知らない、おそらくはこの先も、出会うことのない人々。彼らのほうでもセシルのことを何一つ知らないまま、ひとつに声を合わせている。 光の粒子を舞い散らせ、クリスタルもまた、共に歌っていた。 そして。 高らかに歌う結晶をセシルが手にした瞬間、黄金の光が膨れ上がった。 輝きが津波のごとく周囲を満たし、影という影、闇という闇を遠く追い払う。 光の波に浚われ、セシルの視界から一切の輪郭線が消えた。燃え盛る炎のように熱く、それでいて心地よい感触。 これまで振ったどの剣よりも、握った誰のてのひらよりも、クリスタルはセシルの手に馴染んだ。 このまま一体となって、光の中で溶け合わさる。そんな錯覚を覚えるほどに。 「EZAN!」 ダークエルフが──竜身から、もとの貧相な姿に戻った妖精が、驚愕の叫びを上げる。 太陽が降りてきたかと見紛うような光の中で、そこにだけ、薄汚い染みが出来ていた。 セシルはその染みに向かって右手をかざした。宝石が彼の意を汲み取り、さらに輝きを強める。 「AGIHC……ONION NEIEA BERAEAS……  URAT USIRUK!」 やけに流暢な断末魔と引き換えに、ダークエルフの影が消えた。 それで終わりだった。 『やったー!』 ヒソヒ草の向こうで、少女のような歓声が湧く。負傷したヤンの元に仲間が駆け寄り、手を尽くして傷を癒している。 セシルはクリスタルを掲げ持ち、その様を見守った。 高揚がまだ、体の中に残っていた。

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