四節 Eternal Melody25

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「セシル!  おい、セシル! 返事をせんか!」 呼びかけと同時に、強く体をゆすぶられる。衝撃で、セシルの手からクリスタルがこぼれ落ちた。 そのとたん光が弱まり、世界に輪郭が戻ってくる。 「……シド」 「どうしとったんじゃお前さん、ボーっとして!」 「どう、って……」 まるで眠りから覚めた直後のように、何かが突然、切り替わったように感じる。 セシルは大きく頭を振り、意識をはっきりさせた。 「僕は何をした?  ダークエルフを倒してから」 「特に、何も」 あらかた傷の癒えたヤンが、簡潔にまとめた。違和感が残るのか、しきりに治りたての手足を動かしている。 「そうか……  なら、いいんだ」 クリスタルをシドが拾い上げ、セシルに突き出す。ややためらった後、セシルは手を伸ばした。 受け取っても、恐れていたようなことは起きない。琥珀色の結晶の中心で、光は小さく瞬いている。 それは闇を突き刺すものでなく、木漏れ日のような、柔らかな輝きだった。 ヒソヒ草の向こうでは、まだ音楽が続いている。 ──それも道理かもしれない。彼らはただ、歌うために歌っているのだから。 誰かが止めても、別の誰かがあとを継ぐ。今に伝わるすべての歌が、そうやって、時を渡ってきたように。 セシルはクリスタルルームを見渡し、床に落ちた小さな短剣を見つけた。 黒曜石の刃に、動物の角か骨で作った柄がかぶせてある。セシルたちの持ち物ではない。 拾い上げて裏返すと、浅く刻まれた鹿角のレリーフが現れた。 「……そうか」 面を虚空に向けたテラが、誰にともなくつぶやく。 「これが、お前の選んだ男か」 ちっぽけなヒソヒ草からあふれる歌は、広いクリスタルルームの中で幾重にも反響する。声と言葉と旋律は、終わりのない雨となって、セシルたちの頭上に降り注いだ。

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