三節 山間39

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どこか透明感のある、それでいて懐かしい声がセシルに響いてきた。 「誰だ! それに今何て!?」 息子――確かにそう聞き取れた。 セシルは孤児である。本当の両親というものの記憶を持ち合わせてはいなかった。 自分の中にある一番古い記憶を引きずり出してもバロンでの日々である。 「セシル。どうした?」 急に声を上げたのに驚いたのかテラが訪ねる。 「今、誰かの声が聞こえて――」 「そうか? 私には何も聞こえなかったのだが」 そこまで言ってポロムの方に向き直り返答を求める。 「私も聞こえませんでした……」 「おいらもだ」 合わせるかのようにパロムも首を横に振る。 「じゃあ僕だけに聞こえたのか……」 その時、今までびくりとも動かなかった扉が音を立て横に開いた。 「おいっ! 扉が開いたぜ……」 「どうなっとんだ?」 「行こう……」 戸惑う仲間達を尻目のセシルは歩き出した。 扉が開いたのは偶然ではない。試練が自分を呼んでいるだろう。 そのような確信を持った今のセシルには何ら迷いは無かった。 テラ達もいつもと違うセシルの行動に違和感を抱きつつも後を追い、 建物の中に消えていった。

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