三節 山間40

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「お前が来るのを待っていたぞ……」 今度はよりはっきりと聞こえたその声は間違いなく外で聞こえた声だ。 「聞こえるかポロム?」 「いいえ」 そう言ってポロムは首を横に振る。テラも何も聞こえていないような雰囲気だ。 おそらくはこの声は自分にしか聞こえていないのだろう。 「あなたは……あなたは一体誰なんですか? それに僕を知ってるんですか!」 「我が息子よ……聞いてくれ。今、私にとって悲しい事が起きている。そして その悲しみはこのままさらに加速していくだろう……」 セシルの疑問を余所に声は語り始める。ずっしとのしかかってくるような重みのある声に セシルは質問を止め、聞きいってしまう。 「悲しみですか……」 「そうだ。そして今お前に新たなる力を授ける事になる。その事により私はさらなる悲しみに包まれることに なるだろう。しかし、今はこの手段を用いるしかないのだ。否……私にとってこの方法しか思いつかないのだ。 お前にとって辛い試練になるであろう。だがお前ならきっと乗り越えられるはずだ……頼むぞ」 ふっとその声がとぎれるのと急にセシルの目前に剣が表れたのは殆ど同じであった。 「これは……」 古ぼけているがたいそう高名な剣であったのだろう。その格式高さは失われていない。 そして剣は滑り込むかの様にセシルの右手へと向かう。 その剣はまるで長年、苦楽を共にした愛剣かの様に、セシルの手へ馴染んだ。 「これが新しい力なのか……」 光り輝く剣を握りしめそんな事を考えていると―― 突然、剣の光が増しセシル達の視界を奪った。 セシルにとってその光は何か暖かいものに包まれるかの感触であった。 光が弱まり、だんだんと視界が開けてくる。そして誰もが先程までと全く変わってしまった事に目を疑った。

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