三節 山間41

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「あなたは……セシルさんですの……?」 ポロムは目の前に立つセシルをまるで初対面の人にでもあったかのような顔で見やる。 「あんちゃんなのか!?」 二人が驚くのも無理がなかっただろう、今の自分に起こった事に一番驚いたのはセシル自身であったのだから。 「ああ……そうだよ」 水晶状の物質でつくられた床から反射して見える自分自身の姿をじっくり観察しながら、ゆっくりと口を開いた。 鮮やかな銀色の髪に悟りを開いたかの様な瞳。 そして白を基調とした様相は、先程までの暗黒騎士としての面影は翳りも感じられないほどであった。 「これがパラディンというものか……」 「やりましたわね! セシル様」 「これにて一件落着だな」 皆が嬉しそうに感嘆の声を上げる中、セシルは切り出す。 「まだ終わりでないよ。これからが本番だ」 そう言った後、ゆっくりと声がした方向へと振り返る。 「さあ……血塗られた過去と決別するのだ。今までの自分を克服しなければパラディンの 聖なる力は完璧にお前を受け入れないであろう。打ち勝つのだ暗黒騎士の力に……自分の力に!」 力強いその声が終わると前方に影が人影が現れた。ゆっくりと歩を進め此方へと歩いてくるその影は―― 「昔のあんちゃん!」 「一体、どうなっとんだ……?」 紛れもなく暗黒騎士セシルであった。 「どっちが本物なんだ?」 パロムはきょろきょろと二人のセシルを見比べている。 「どっちかな……」 それはセシル自身でさえ容易に答えが導き出せる事ではない。ふいに暗黒騎士が剣を抜きはなった。同じくセシルも剣を抜く。 「セシル! 戦うのか?」 「ああ……」 「テラ、手を出さないでくれ……これは僕に与えられた試練。誰にも干渉される事なく片をつけたいんだ。 それに今までの過ちを償うためにもこいつを! 暗黒騎士を倒す!」 大切な者を殺されたミシディアの人々、自分を導いてくれた長老、憎しみを堪え、自分を試すと言ったジェシー。 ここで誰かの助けを借りる事は彼らに対する完璧な償いにはならないであろう。そして何より自分自身が 納得しない。 「さあ、行くぞ。暗黒騎士よ……血塗られた運命。ここで断ち切る!」

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