三節 山間44

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「セシル!」 遠くで誰かの呼び声が聞こえた。いや、確証はできない。 「セシル……」 またもやだ。そして今度は少し悲しそうな声。 更に自分を呼ぶ声が幾多にも増える。そのどれもが聞き覚えのあるものばかりだ。 そしてその中でもセシルの心に深く刻まれたものの声が聞こえてきた。 リディア、ギルバート、それにヤンの声だ。 そうか彼かはみな僕と行動を共にした。そして…… 最後までは考えたくは無かった。ただ、確実に言える事はその仲間達は誰もが自分よりも 生き長らえるべきはずだった者達だ。 ヤンには信頼される仲間達が沢山いたし奥さんもその帰りを待っているであろう。 その奥さんの耳にもバロン域の船が消息を絶った事は耳に入ってきてるはずだ。その知らせを聞いた時彼女は どう思っただろうか? ギルバートも亡き父に代わり国を率いなければならなかった存在。それなのに…… リディアはまだ幼かった。そしてその少女を守ると自分はオアシスの村で誓ったはず。たった一人の人間を 守ると言う約束さ自分は果たせなかったのだ。つくづく情けない。

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