三節 山間60

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「馬鹿ですね……それでもし、私が此処にいなかったらどうするつもりでたの?」 「でも、結局は会えた……」 自分でもえらくいい加減な理屈だとは思ったが、敢えて言った。 「…………」 「…………」 そこまでで会話が途切れた。 「無理をしないでください。そんなに取り繕わなくても、一番言いたい事があるんじゃないですか?」 「明日にはここを発つ……」 促され、いきなり切り出す。 「それだけを言いたくて……」 言葉自体には大きな意味はなかった。他にもお互い、話す事はいくらでもあるはずだ。 だが、もうそれだけで充分だった。今更、謝罪の言葉が意味を成さない事をセシルは悟っていた。 「それじゃあ……」 踵を返し、夜闇に消えようとしたセシルをか細い腕が引き留める。 「私はまだ、あなたと面と向かって話す事はできません。それに今もあなたの事を全て許すこと もできません。ですが……」

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