三節 山間66

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「それで長老は?」 昨日の内に礼は言っておいたが、あの人にはお世話になった。未練がましいかもしれないが、旅立つ直前に、もう一度だけ 顔を合わしておきたいと思った。 「長老は……明朝、祈りの塔に入られました」 「祈りの塔だと!」 「テラ、知ってるのか?」 「ああ……一応はな。詳しくは知らんがそこに入ったとなれば当分は出てこないと言うことだ」 そこまでして、長老は何に祈るのか? だが、セシルはそれを理解していた。 長老も世界……いや、守りたい者の為に戦いを始めたのだ。それはセシル達の様に直接的に手を動かす行為ではないかもしれない。 だが、その行いも一つの戦いである。 それだけで聞けば充分であった。此処にはいないが、長老が自分を全力で見送ってくれているのを感じる事ができた。 「そうか……じゃあ、僕たちも急ごう!」 小屋に入る途中に一度だけ後ろを振り返った。小高いこの場所からは白い町並みが一望できる。 ひょっとしたら、この町のどこから見るよりも美しい光景だったのかもしれない。 長老やジェシーの事が少しだけ、思い出される。しかし、もう迷いは無かった。 「みんな……これから行くバロンは僕の故郷と言っていい場所だ。そして戦いは激しくなる。ひょっとすると 生きて帰れないかも知れない。それでも僕に付いてきてくれるか?」 だが、そんな質問は無駄であった。 「勿論だ」 「今更、水くさいぜ」 「どこまでも」 返事は様々であったが、皆同じ思いだ。 「分かった行こう! バロンへ」 小屋の中、ひっそりと描かれた魔法陣に足を載せる。 途端、視界が揺るぎ始める。ぐにょりと曲がり始める視界の中、セシルはカインやローザ。 そしてゴルベーザの事を考えていた。

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