二節 再開の調べ17

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「ところで、この竪琴を弾いている方をご存知だろうか?  以前はぐれた仲間のものと、似ている気がするのだが」 「竪琴、ですか?」 「そうだ、教えてくれないか?」 ヤンが用件を思い出してくれたおかげで、セシルは居たたまれない思いから解放された。 楽器を手にした巫女たちが姿を隠しても、最初に聞いた竪琴の音だけは未だに続いている。彼らの会話を聞いてでもいたように、ぴぃ──ん、とひときわ高く澄んだ音を響かせた。 「……もしかして、今の音ですか?  これは水琴と申します。地底に据え付けた瓶に水滴が落ちると、空隙に反響してこのような音がするのです。  人が奏でている訳ではありません」 「そう……なのか」 「ですが、ひとつ思い当たることがあります。少し前、この近くに流れ着いた者の話が、あなた方のそれと良く似ているのです。  当人はダムシアンの王族と名乗っていますが……お会いになりますか?」 「……やはり!」 「頼む!」 竪琴の正体を知って一度は気を落としたセシルだったが、続く神官の言葉で心が弾んだ。 それと同時に疑問も解けた。最初に水琴の音を聞いたとき、ギルバートだと思い込んだ理由──まさにこのエンタープライズから降り立った時、彼らを取り囲んだ女兵士たちが、それらしい人物の話をしていたからだ。 「では、ご案内いたします」 結い上げていた髪を下ろし、神官は奥の建物に向かって歩き出した。近寄ってきた巫女に神楽の再開を指示し、他の神官にも伝えるよう頼む。 そのまま正面のスロープを上がり、広々としたテラスを回って南向きの部屋へとセシルたちを導いた。 「眠っていなければいいのですが。  ……入りますよ」 そう言って、黒檀でできた扉を神官が押した途端、膏薬の匂いが鼻を刺す。寝床の上に身を起こし、錆の浮いた塊を抱えた人物が、こちらを振り向いた。 「……セシル!? ヤン!  無事だったんだね!」 ──人違いだった。 一瞬そんなことを考えてしまうほど、彼らの名を呼ぶ声は、酷くしわがれ、かすれていた。

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