一節 刻む足跡19

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おぉ……おぉ……ぃ……ぉおぉ…… 『セシル……ぉぉ……セシル……』 立ち去ろうとしたその刹那、不気味にとどろく声に呼ばれて、セシルは驚き振り返った。棺の前の副長と目が合う。 「……風ですよ。どこからか、吹き込むんです」 セシルより一回り以上年上の騎士は、一瞬だけ閃いた狼狽を消して微笑んだ。彼が足繁くこの場所を訪れていることを伺わせる、落ち着き払った態度だ。 その言葉に異を唱えるかのように、再び声が、セシルを呼んだ。 『……セシル……』 冷やりとした墓所の空気が背筋をなでる。さらに力強く、はっきりと聞こえてきた声は、もはや聞き間違いなどではない。 『セシル……其処に居るのか、セシル……』 呼びかけの合間に、冷たい石床を踏みしめる靴音が混じる。狭い地下空間で音は反響し、源は定かでないが、あきらかに近づいてきていた。 「……誰だ!?」 セシルは神経を研ぎ澄まし、気配を探った。 声は居並ぶ棺のさらに奥──ではなく、セシルが戻ろうとしていた方角から、響いてくる。 そのことに気付いて、セシルは剣にかけた手を離した。苦笑を浮かべ、緊張を解かない副長に、地上への道を指し示す。 まさにそのとき、物音の主が姿を見せた。がっしりとした体躯、もじゃもじゃの髭、額のゴーグル、機械油まみれの作業服── おなじみ、我らが技師長殿だ。 「セシル~~!ここにおったんか~っ!  すぐ出発するぞ!」 「……技師殿。お静かに願います」 セシルの姿を認め、木槌を振り上げたシドに向かって、副長は憮然と注意を促した。

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