一節 刻む足跡20

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「……すまん、ちと気が急いてしもうた」 英霊たちの眠りを妨げた非を認め、棺の群れに向かってシドが頭を垂れる。彼が神妙にするのは珍しい。 「それにしたって急ぎすぎだよ。あと2日はかかるはずだろう?」 エンタープライズ号の儀装にかかる時間は、あらかじめシドから告げられていた。こういうことに関して、彼の予測は外れたためしがない。まして、整備に手を抜くようなことは絶対にない。 「なんせ、あの子らの命がかかってるんじゃからの。ワシらも気張ろうというものじゃ。  まだ細かいのがちと残っとるが、ミシディアまでなら十分飛べるぞ!」 「ミシディア? あの子たちって、まさか……パロムとポロム?」 「そうじゃ! あの耄碌ジジイ、昨日になっていきなり言い出しおってからに!!」 「お静かに」 「……すまん」 どうやらシドは、徹夜の果ての興奮状態にあるようだ。はじめのほうこそ声を潜めていたが、すぐにいつもの怒鳴り声に戻ってしまい、再び副長に諌められる。 セシルもまだ事情は飲み込めないが、双子を救う可能性がミシディアにあるらしい。それならば、一刻も早く飛び立つことに否はなかった。詳しいことは、後でテラにでも聞けばいい。 「今行くよ。皆は?」 「もう乗り込んどるよ。あとはお前さんだけじゃ」 「わかった」 副長への挨拶も忘れ、セシルはすぐにも上に戻ろうとした。しかしなぜか、足が動こうとしない。 それどころか全身に痺れが走り、指先すら満足に動かせなかった。 『……………セシル……………』 奥から──死せる勇士らのつくる列の先、薄闇に沈む通路の向こうから響いてくる声が、セシルの自由を奪う。 どこからともなく風が吹き始めた。

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