四節 これから3

「四節 これから3」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

四節 これから3」(2007/12/14 (金) 04:40:42) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

「なにをつまらん話をしておる!  特にセシル、おぬしは今の状況がわかっておらんのか!!」 がつがつ、がづっ。 憤怒に顔を染めたテラが、杖で三人を打ち据える。 「なるべく目立たぬようにすると、申し合わせておったではないか!  こんなところで下らぬことをダラダラと……少しは頭をつかわんか!」 「テラ様、どうか落ち着いて!」 「じいちゃんの怒鳴り声のほうがまずいって!」 言っていることはもっともなのだが、自分はともかく、双子まで本気で殴るのはやりすぎだ。なるべく子供たちに打撃が行かないよう体で庇いながら、嵐の通過を待つ。 長く耐える必要はなかった。いくら頑健であろうとも、老人であることに変わりはない。デビルロードの影響もあってか、すぐにテラは息を切らし、その場にすわり込んだ。 いくら理由を尋ねても口を利かず、息を整え立ち上がってもまだ無言を通すテラに、セシルたちも根負けして場所を移すことにした。 みっつほど角を越えた先には共用の井戸があり、周辺が小さな広場となっている。朝一番の水を汲みに来た人々が、そこで列を作っていた。 異様なほど、静かだった。 音はある。風が生む葉擦れの音、桶に空けられる水の音、木と石が触れ合う音。水槽の縁に陣取った小鳥たちのまばらな囀り。だが人の声がない。 二十人近い女性が集まっているというのに、雑談はおろか、軽い挨拶さえ交わされていないのだ。 「……なんか、気味悪いな」 率直な感想を告げるパロムの声も、別人のように大人しい。セシルの目から見ても、やはり、荒んだ印象は否めなかった。 みな一様に顔を伏せ、黙々と自分の作業だけをこなして足早に去っていく。脇道との境に立つセシルたちに注目する者もない。たまにこちらを見たとしても、関わり合いを避けるように顔を背ける。 その女性も最初は同じように、無言のまま通り抜けようとした。セシル達が潜む路地を数歩ゆき過ぎて、あわてたように踵を返す。見開かれた眼は、まっすぐセシルへと向けられていた。

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示:
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。