四節 これから5

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「お前は!」 「パラディンになったからわからないのか?  僕だ、セシルだ!」 パロム、ポロムはもちろんだが、テラとヤンの間にも面識はない。彼が見知っている相手はセシルだけだ。 もしかしたら。祈るような気持ちでセシルは名乗りをあげた。 「わからいでか! 探したぞセシル!  バロン王に逆らう犬め!」 「なんだよ、そっちこそバロンの犬じゃ……」 「パロム!!」 予期した通りの返答に落胆する暇もなかった。悪態の途中で尻餅をついたパロムの頭上を、黒い疾風が薙ぎ払う。ヤンが繰り出した蹴りの鋭さは、以前と比べて些かの遜色もない。それどころか、力強さを増してさえいた。 カインがそうであったように。 「ふん、それなりに骨はあるようだ」 「ヤン、君まで……」 以前に見せた、流れるような連撃を繰り出そうとはせず、再びセシルたちと距離をあけて構えを取るヤン。全身から殺気がたちのぼり、膨れ上がった筋肉が黒ずんだ肌を押し上げる。手加減を期待できる雰囲気ではない。 この場での説得をあきらめ、セシルは剣を抜いた。仲間は後ろに下がらせる。接近戦に弱い魔道士と、格闘に秀でたモンク僧。一度懐に入られたら、まともに呪文を唱えることも出来まい。 だが、ヤンから離れたことで、セシルと3人の間に空白が生まれてしまった。2人のバロン兵が割って入るに十分な隙が。 「……かかれ」 当然のようにヤンが命令を下し── 「はっ!」 当然のように、バロンの兵が従う。 それを契機に周囲で悲鳴が巻き起こり、遠巻きに様子を見ていた野次馬が我先にと逃げ出した。

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