四節 これから10

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「は!」 何度目かの攻撃を受け止めヤンの声は曇りの無き明確なものであった。そう、直前までとは違う。 「セシル……殿か……?」 「気づいたのか!」 「ああ……自分が何処にいるのか、何をしていたのかは……あの時以降の記憶がまるで思い出せないが…… 邪悪なる気配が私に何かを囁きかけていたような気がする」 あの時とはファブールを出航した時の事を指しているのだろう。 「記憶喪失だったのか?」 「おそらくはな。だが、今のセシル殿からは以前、行動を共にした時とは違う事は分かる。どうやら 迷いを克服できたようですな……」 「ヤン……」 穏やかな口調に思わず自分の声も震える。 「前にも言ったと思うが私は剣術の疎い、だが、セシル殿は間違いなく強くなられた。肉体的にも精神的にもな 良い太刀筋でいらっしゃる……」 評する声を聞きつつセシルは剣を収めようとする。 「さて、この状況をどうするかだな……」 「ヤン様!」 テラ達と戦闘を繰り広げていた兵士達がこちらにやってくる。 「どうした?」 ヤンはセシルの時とは違い、暗い声で応対する。つまりはこの兵士達を率いてたときの声だ。 「すいません。奴らを捕らえられませんでした。何分素早い者であって……」 「そうか。良かった」

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