四節 これから17

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 言いながらセシルはがっかりしていた。先程思いついたばかりの利点が、もう通用しなくなって いることに気付いたからだ。  確かに自分が赤い翼のセシルだということは知られていないだろう。だが先程の騒ぎで、今度は 肝心のパラディンの自分の顔も、衛兵に覚えられてしまった。晴れて正真正銘のお尋ね者である。 こうなってしまっては迂闊に動けない。  とりあえずこの場を離れなくてはならなかったが、どこへ行ったものか。  安易に宿などに泊ればすぐに見つかってしまうだろうし、第一、町人の様子を見る限り、泊めて くれるかどうかすら怪しいものだ。  あれこれ考えを巡らせかけて、セシルはやめた。  考えるまでもない。この街にきて、どのみち自分が頼れる場所など、一つしかなかった。 「行こう、こっちだ」  街の一端を示して、セシルたちは足早に歩き出す。ぼんやりと成り行きを見守っていた民衆は、 彼らが立ち去りだすと道を開け、騒ぎが終わったらしいことを悟りちらほらと散らばっていった。 そうしてまた、街の中を無気力な空気が押し包む。  セシルは少し歩いてから先程の広場を振り返り、もうそこから自分たちを気にかける視線が消え ていることに驚いた。あれだけの騒ぎを起こしたというのに、町人たちはもうセシルたちの存在を 忘れかけていた。その態度は、いかに彼らが虐げられた環境にあるかを、そして今のバロンの姿を 克明に示していた。彼らにとって重要なのは、兵隊に目を付けられぬよう、決して出しゃばらず、 臆病にその日その日を生き抜くことだけ。たとえ凶悪なお尋ね者どもがあらわれようとも、彼らが 自分に関わりさえしなければ、それ以上彼らに関心を示そうとする者などいないのだ。  いや、その空虚な人混みの中からただ一人だけ、セシルたちの後を追ってくる人影があった。

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