四節 これから19

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 遠く彼女の様子を振り返りながら、テラが口を開く。 「セシルよ。ローザというのは、確かそなたの…」 「まだ話していなかったね、テラ。そういえばお礼もまだだった」 「あの病人の娘だったな?」 「そうだ。あなたとギルバートのおかげで、彼女の命を救うことが出来たよ」 「しかし、その娘はどこに…?」  テラの問いかけに、セシルは目を細めて口を閉ざす。  苦しげな彼を見かねて、ヤンが言葉を返した。 「ローザ殿は、ゴルベーザの元に連れていかれて………」 「……なんということじゃ、…するとあの女性は」  再びシャーロットの姿を顧みるテラに、セシルが付け加えた。 「ファレル家の、ローザの屋敷に仕えている女中だよ」  言いながら、セシルも振り返り、こちらを見つめる優しげな中年の女性でを見た。  懐かしさに胸が溢れた。幼い日々の想いが駆け巡る。だが彼はすぐさま彼女から目をそらした。  自分たちの境遇を忘れてはならない。この懐かしさすら、今だけはあだになってしまうだろう。  セシルは努めて先を見据え、いっそう足を早めていった。  やがて、彼らは街外れにある一軒の家の前で止まった。

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