四節 これから21

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「先に行け!」 テラと双子を目前の階段に押しやり、セシルは門扉の前に陣取った。隣に立ったヤンと二人で壁を作り、魔道士たちへの追撃を断つとともに、背後からの攻撃を未然に防ぐ。 相対した兵たちも隊列を組んだ。互い違いに前6人、後ろ5人のやや変則的な陣形でセシルたちを半包囲する。 素早く統制の取れた動きは、彼らが軍の精鋭として鍛錬を怠っていないことを証明していた。だが突きつけられた剣先から、王の盾たる誇りを感じ取ることは出来ない。 「愚かな……せっかく拾った命を」 「馬鹿を言え!  この様を王に知られたら、どんな目にあわされるか……」 「西隊の二の舞は御免だ!」 ヤンと、彼の先程までの配下のやりとりが、いま兵たちを動かしている力の正体をセシルに教えた。王への忠義や報復心ではなく、懲罰に対する怯えが、執拗な追撃へと彼らを駆り立てたのだ。 セシルたちの実力を思い知らされたにしては、やけに増員の数が少ないのも同じ理由だろう。よほど信頼しあったものでなければ、自分たちの失態を明かすことが出来ないのだ。そこまで蝕まれている。 「……元飛空挺団隊長、赤い翼のセシルだ!  バロン王に会う! 王を問い質して、こんなことは終わらせる!  それまで隠れていればいい!  好きでこんなことをしているんじゃないだろう!?」 思い切ってセシルは声を上げた。純粋な恐怖から王に従っているのなら、逆にきっかけさえあれば、味方についてくれるかもしれない。 間違いなく、彼の言葉は近衛兵の心に届いていた。ほんのわずかな時間だけ、奇妙な連帯感がセシルとバロンの兵を結びつける。 そして。 「……あんたと違って、俺にゃ家族がいるんだよ」 「そいつはあの世で、西隊の連中に言ってくれ。  あと半月早けりゃなぁ」 セシル以上に沈痛な表情で、兵たちは、彼の期待を打ち砕いた。

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