四節 これから24

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3人がかりの治療が功を奏し、無事ヤンの傷はふさがった。とはいえ、既に流れた血まで消えるわけではないので、一見すると相変わらず深手を負っているように見える。 だからだろうか、なおも懸命にケアルラを唱え続けるつづけるポロムの肩に、テラが皺深い手をおいた。 「もうよい」 「私ならば大丈夫だ。ほら、この通り……」 テラの、そしてヤン自身の制止も無視して、ポロムの呪文が完成する。 「ケアルラ!」 小さな掌から光の粒があふれ出る。だが、無残に裂け乾いた血の色に染まった道着の下に、もはや癒すべき傷はない。 無意味に放出された魔力が宙に掻き消え、くにゃり、とポロムが膝を崩す。精神力を使い果たしたのだ。テラの顔にも疲労が浮かんでいた。セシルも同様だろう。 ぐったりと目を閉じた幼い白魔道士を、ヤンが抱え上げた。 ほんの数歩先では、トルネドの魔法が生み出した竜巻が未だ猛威を振るっている。風の唸りに混じって、巻き上げられた兵士が崖に打ち付けられる鈍い音が聞こえてくる。 そびえる風の柱に目をやり、大きく息を吐き出すと杖にすがりつつテラは階段を上り始めた。 ヤンとポロムが後に続き、最後にセシルが、呆然と立ったままのパロムの手を掴む。篭手を通して伝わる感触は、いかにも脆く、頼りない。 「……どうして、こんなことを」 問いつつも、双子の行動の裏にあるものを、セシルは半ば察していた。だから、文字通り足を引っ張った彼らを責めるつもりはなかった。 ささやかな、ある事実をここに至るまで彼は見落としていた。 「なんでって、なんでって……  オイラのほうが聞きたいよ!  あいつら魔物じゃないじゃんか!」 ミシディアの天才魔道士たちは、これまで魔物以外と──ただの人間と戦ったことはなかった、ということを。

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