四節 これから25

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ぷつぷつ泡立つ表面に砂糖をふたかけ放り込む。手鍋を火から下ろし、軽くかき混ぜると、柔らかい匂いが鼻先をくすぐった。甘味の塊が溶け込んだのを確かめて、脇に並べた木彫りのマグに手早く中身を注ぎ分ける。 2人分のホットミルクを手に、レッシィは食卓へ向かった。このところずっと一人で使っていたテーブルが、今日は埋まっている。 鏡に移したようにそっくりな二人の客の前に、レッシィはそっとマグを置いた。 「あんがと」 「ありがとうございます」 容器を通して伝わる暖かさを確かめるように、しばらく手を添えたあと。熱々の液体に男の子が果敢に挑み、敗退する一方で、慎重派の女の子はふうふうと息を吐きかける。 パロムとポロム。ちゃんと名前は覚えたが、どちらがどっちか自信がない。 この家を訪れた時は、二人ともひどい有様だった。男の子は涙と鼻水で顔中ぐしゃぐしゃ、女の子は逆に血の気血の気が引いて、立っているのも辛そうだった。 それに比べれば、今は多少落ち着いて見える。 きっと兵隊たちのせいだ。町中を我が物顔でのさばっているあの連中に、ひどく怖い思いをさせられた違いない。 ──そんな風に考えたのは、まず第一に、彼らを連れてきた騎士というのが、父シドの年下の友人にして反逆者、セシル=ハーヴィその人だったからだ。 第二の理由として、この家の周辺では、兵士と出くわす確率が非常に高い。 仕事に熱中するあまり3日続けて戻らぬ父が、王に逆らい拘束されたとの知らせは、4日目の昼過ぎに彼女の元に舞い込んだ。 同時に、完成を間近に控えた最新鋭の飛空挺が、いつのまにやら消えていたことが発覚していた。 以来、階段を下った門の前には、兵士の一団が張り付いて何かと目を光らせていた。 初め恐ろしく、慣れてくると煩わしい生活も、あと少しで終わる。 その先触れだと思えば、別人のように様変わりしたセシルも、血だらけのモンク僧も、どんなに怪しく見えようと、追い返すなどとんでもない。 キッチンにとって返し、椅子がないから、と居間に追いやったセシルたちに供するための紅茶を用意するレッシィ。 彼女は、企みめいたことは何ひとつ知らされていない。 しかし、変化の兆しを読み取る聡明さと、父譲りの豪胆さならば、ありあまるほど持っていた。

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