四節 これから26

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「よもや、技師殿が捕らえられていようとは……」 壁を背に直立したヤンが、重い息を吐き出した。 赤い翼を手にしたゴルペーザに対抗するには、飛空挺がどうしても必要だ。 シドの協力を得ることは、それはまだセシルが暗黒剣を振るっていた頃、ヤンらと共にファブールを出港した時からの、一貫した目的である。 それだけに、彼が捕まったと聞いた時の落胆は大きかった。 「だからといって、引き下がる訳にもいくまい。  なんとしてもワシらの手で救い出すんじゃ」 「場所がわかればいいんだけれど……  ヤン、思い出せないか?」 シドの人相風体を伝え、ヤンの記憶を引き出そうと試みるセシル。実直なモンク僧は両目を閉ざし、こめかみを揉み解して期待に添うべく努力したが、結果は芳しくなかった。 「済まぬが、そのような御仁を見かけた覚えはない。  ……いや、それどころか。  私はあの城で、以前顔を合わせたことのある相手を、まるで見かけていない気がする」 「というと?」 セシルの問いかけに、厳しい顔でヤンはうなずいた。 「奴らに操られていた私は、消えた飛空挺を探す命令を与えられ、バロンの城と町をくまなく歩き回った。  しかし、ファブールの同胞はもとより、ゴルベーザ、カイン、そしてローザ殿──  誰一人として、顔をあわせた覚えがないのだ。  安否のわからぬ者たちや、囚われている方々は別としても、あまりにも……」 「おぬしが覚えておらんだけではないのか?」 「そうかもしれませんが」 ヤンの表情は険しい。自分の記憶を疑われたから、というよりは、取り戻した記憶そのものが彼を不快にしているようだった。

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