一節 刻む足跡9

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中には、エンタープライズを発進させる時に通った際に感じた、無人感はすっかりと 無く、今は人が居住していると分かる雰囲気になっていた。 だが、もはや日が西へと傾き、夜へと移行しようとする時期である。 部屋はがらんどうとしており、男とセシルが残されるだけであった。 「それで……」 セシルが勧められた椅子に着席すると、間もなく男が訪ねてくる。 「ああ、カインの事なんだ……」 「カイン」 その名を聞いた男はさして驚く様子も無く。 「ああ、やっぱりそうでしたか」 と言った。 「あなたが此処に来るのはそれくらいしかありませんからね」 そう言って、男――竜騎士団現副長はくすりと微笑した。 隊長として任命されたまだ若いカインを影ながら支えた彼にとって、セシルとカインの 関係も承知の上であったのだ。 「仲良き事で……羨ましいものですな」 最後にそう付け加え笑った。 「…………」 その笑いが今のセシルにとっては辛かった

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