一節 刻む足跡10

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「それで?」 「その、まずはすまない……」 本題に聞こうとする副長に、セシルは先打って謝罪の意を述べる。 「僕と一緒にいたからカインは……」 ミストでセシルと共に消息を絶ったカインは未だにバロンでは行方不明という扱いに なっていた。 「いや! いいのです! むしろ私はあなたについていったカインさんには賞賛の意すら称えたいと 思いますよ!」 大きく身を振る副長は更に続ける。 「むしろ私達の方こそ、王が偽物であったと気付かずに、それどころかただ恐ろしく、 その意のままに動いていたのです!」 王の件についての真相はセシルの判断により、すぐにでも国の重役達に伝える事にした。 その事実はあっというまにに民への周りへと伝わり、今やもはや民にとって周知の事実となっていた。 最も、古くからの重臣達の大半は少なからずの予想は抱いていたようであった。 「全く持って、不甲斐ないです。カインさんに合わせる顔がないですよ……」 落胆する副長にとっては、カインが行方不明になっていても無事であると信じているようである。 「その事なんだが……」 歯切れ悪い言葉であるが、何とかセシルは切り出そうとした。 セシルにとってはここからが本題であったのだから。

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