一節 刻む足跡13

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副長を追いかけて到着したのは、城の地下深くの一角の 部屋であった。 (この場所は……) 既に開け放された扉の中には、先だって来ていた副長が二つの棺の 前へと立っていた。 セシルはこの場所――バロンの歴史へと貢献してきた群雄達の眠る場所 に立ち入る事は数える程しかなかった。 それも、孤児として後ろ立ての無かった為である。 勿論、此処に眠る者に対し敬意を抱いていなかったとは思っていない。 むしろ、自分のような者が来ては行けないという遠慮があったのだ。 「これは……カインの……」 副長の目前に備えられた棺の一つに刻まれた名には覚えがあった。 ハイウインド。 カインと同じ名だ。とすれば父はここに眠っているのか…… 「ハイウインドというのは、竜騎士を率いるものが名乗る姓なのです。 つまりは、元からの名ではなく、その時々に授けられるもの……」 「つまりカインの父さんも?」 「はい、立派な方でありました。まだ若造であった私も大変お世話になりました……」 副長はそこで一旦言葉を切った。感傷に浸っているのか、しばらく無言であった。 「本当に立派な方でした……しかし、その後戦地に赴いき、その命を散らしてしまったのです」 「知らなかったよ……」 セシルがまだ学校へといた頃の話である。当時のセシルにはただ何となく大変な事が起きていると いう事くらいの自覚しかなかった。 「この事はカインさんにはしばらく内密にしていました。母親を失って間もない頃でしたからね……」 そこまで言って今度は少しばかり話題を変えた。 「正直セシルさんがいなければ、あの時のカインさんはもっと苦しんでいたでしょうね。あなたが いてくれたおかげでカインさんは元気を取り戻していったですから」 「いや、僕の方こそ……」 そう……孤独な寂しさを紛らわせ、楽しさを分かち合えたのはカイン、そしてローザのお陰なのだ。 自分もカインと一緒にいることで救われていたのだ。

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