一節 刻む足跡16

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(今日はここまでだよ……) 立ち止まるセシル。不服そうなローザ。 (ど……) どうしてと聞きたいのだろう。 (だって君のお母さんは僕の事を……) (そう……) 悲しそうに去っていく彼女をセシルは黙って見送っていた。 (ねえ、私も今日からお城へ勤めるのよ……) そう彼女が切り出したのはいつだったろう…… (白魔導士団に入ることにしたの) 胸を張って答える彼女。決して白魔法が得意だったとは聞いてなかった。 (だって……こうすれば……) 続きの言葉をローザは語らなかった。 あの時のセシルには分からなかった言葉であった。 しかし、今ならその言葉の先にあるものが分かる。 その言葉の持つ意味も…… 何処のものか全く保障の無いセシルをローザの母親は嫌っていた。 シャーロットは、ローザの心情も母親の苦悩も知っていた。 そのどちらの肩を持つことができずに苦しんでいた。 ローザはローザで母親の事が嫌いではなかった。 白魔導士団へ入る事には相当な葛藤があっただろうし、実際に母親との対立は あったはずだ。事実、ローザはそれ以降、殆ど家に帰ってはいないはずだ。 それなのに……自分は――心の何処かで彼女の気持ちを理解していたはずなのに……

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