四節 これから46

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「ごめん、思い出せないや……」 不思議であった。自分の中では今でもその夢を見たという事は恐怖に感じているのに。 全く内容を思い出せないのだ。もしかしたら思い出したくないのかもしれない。 「でも……いやな夢を見たって気持ちはあるのね。もしかすると正夢になったりして」 「やめてよ! そんなこと」 思わず声をセシルは荒げた。 詳細こそ忘れたものの、その夢が悪い夢だという確信は未だセシルに心を支配していた。 本当は、あれは誰かの悪戯であった。自分は何か妖しい術によって、みたくもないものを見さされていた だけだ。自分の見た夢だとも認めたくはなかった。 「冗談よ冗談」 本当に冗談だったつもりなのだろう。過剰気味のセシルの反応にレッシィはたじろいだ。 「ごめん……」 「いえ、私もちょっといたずらがすぎたわ。後、一つ忠告しとくわ」 拒否を許可せぬ意気にセシルは黙って聞き入る。 「その直ぐに謝る癖。自覚はないのかもしれないけど、それが、他の誰かがあなたを拒絶する理由 にもなってるかもしれないのよ」 今でこそ人との付き合いはそこまで悪くはないが、少年時代、もっと正確にいうと、学校時代の事だ、 セシルはあまり人付き合いが円滑に進んでいなかった。 それは、自分の出生が不明でありながらも王に大事にされていたからだという事への妬みのせいだと 思っていた。この考えは間違いではなかったし、今でも間違いだと思っていない。 だが、そのような身分上の問題を横に置いていてもセシルは他人との関係をこじらせてしまうことが あった。 そして彼女は言う。原因はあなたの中で無意識下の中に存在していたと。
「それでもやっぱり、心配でね。なかなか寝付けなかったりするの。もし眠れたとしてもね こうやってすぐに目が覚めちゃったりして……」 そこまで言って、彼女はあっと声を潜めた。 「なんだか、愚痴みたいになっちゃたわ……ごめんなさいね」 「いや、むしろ安心したよ。相変わらずみたいでさ。此処に通してももらったばかりの時は 正直、お父さんがいなくなって消沈してんじゃないかと思って……」 「はは、私がそんな性格じゃないってのはあなたも良く知ってるでしょ」 そうなのだ。 彼女――レッシィ・ポレンディーナはシドとその妻から生まれた子供であった。 女性ながらも父親ゆずりの性格は昔ながらのものであり、年下であるセシルも過去、学校時代周囲から 浮き出したセシル自身をとても親身になって接してくれた数少ない人物であった。 彼がここまで気を許している相手はカインとローザに続くであろうか。 そして、シドの妻、つまりは彼女の母親が早くに亡くなってからは、一人でこの家を守ってきた。 「そういえばセシル。あなたはなんでこんなに朝早くに起きてきたの?」 「何か奇妙な夢をみてね……」 その問いにセシルは素直に答えた。自分でも驚くらいにだ。 比較的親しい関係であったシャーロットですら無下に扱ったのだ。 それなのにこの体たらく、そもそもこの家に訪れたのも、彼女を無意識の内に信頼していたのかもしれない。 「どんな夢だったの?」 「ん……えーと……」 問いに返答しようとして気づいた。 自分がその夢の内容をさっぱり忘れてしまっている事に。

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