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「ティナ」
ふいに名前を呼ばれてティナが振り返ると、
そこには、エドガーと見知らぬ初老の男が立っていた。
たっぷりとあごに蓄えられたひげといい、
さながらライオンのたてがみのように逆立っている茶色の髪といい、
初対面の者を怯えさせる程の威圧感を全身から放っている。
その男はティナを見下ろしたまま、値踏みするかのようにじろりと睨んだ。
「ほう、この娘か…氷漬けの幻獣と反応したというのは」
ティナは‘ゲンジュウ’という言葉を聞きとがめると、目を瞬かせた。
「ゲンジュウ?それがあの生き物の名前なの?」
「生き物?さて、な。
はたしてあれが死んでいるのか眠っているのか、
そもそも生き物なのかどうかすらわからん。
…ティナ、といったか。おぬしはどう考えておるのだ?」
その問いに、ティナは困惑した表情でただ首をふるしかなかった。
代わりにエドガーが口を開く。
「バナン様、なぜティナが失われた力を持っているのか、
なぜあの幻獣に反応したのか、彼女自身にもわからないのです。
帝国に操られていたせいらしいのですが…」
エドガーの言葉に、バナンの鋭い目がすっと細められた。
ティナを見つめる目つきは一層の鋭さを増す。
「伝書鳩の知らせでおおよそは聞いておる。
武装した帝国兵50人を相手に、たったの3分で皆殺しにしたとか…」