SubStory 2 nao chora mais(3)"白"

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シドの屋敷はバロンのはずれ、高台のほとんどを占めている。四方は急激な崖となって落ち込み、さながらさながら天然の物見櫓だ。 ぐるりと周囲を囲んだ塀、その内側にわずかばかりの緑が配され、真上から降り注ぐ陽の恵みを受けている。 ポロムの姿を求め、セシルは心持ちゆっくりとした足取りで、草の上に残る新しい踏み分け跡を追った。 「服が汚れるよ」 「セシルさん……」 蓋をした井戸の上で、幼い白魔道士は膝を抱えていた。間の抜けた呼びかけに反応し、涙で汚れた顔を向ける。 セシルは彼女のそばの地面に腰を下ろし、今しがた通ってきた道を眺めた。 つられたか、ポロムも同じ方に目を向ける。塀に沿って続く茂みは、あまり手入れが行き届かず、方々に枝を伸ばしていた。 追いかけてきたは良いものの、慰めの言葉はまだ見つからない。 セシルは黙ってポロムの頭を撫で、髪に絡んだ葉を取り去った。 「……わたし」 頼りない声でポロムが話し出す。 「まちがったこと言ってません。  パロムはずるいです。  いっつも好き勝手して、いっつも魔法を使いたがってるくせに」 か細い声が、次第に刺々しくなっていく。拗ねたような言葉も瞳も、セシルのほうを向いてはいない。 「あんなの、ただのわがままです。  そんなのいつものことだけど、でも、こんどは遊びじゃないのに。  ちゃんとしないと、また迷惑かけちゃうのに。  それなのに、人の気も知らないで……!」 「怒ってるのかい?」 「違います!」 怒ってるだろう、とは言わず、セシルは明るい栗色の頭を自分のほうへ引き寄せた。 セシルの手を嫌がるように、ポロムは激しく首を振って逃れ──そうかと思えば、逆に腕にしがみつく。 「パロムなんか……パロムなんか……」 いつものポロムらしくない、そしていかにも子供らしい糾弾に、すすり上げる音が混じりだし、やがて完全な嗚咽に取って代わられた。

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