SubStory 2 nao chora mais(4)"白"

「SubStory 2 nao chora mais(4)"白"」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

SubStory 2 nao chora mais(4)"白"」(2008/03/22 (土) 09:12:02) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

ポロムは嘘をついている。 温みを帯びた髪を撫でながら、ぼんやりとセシルは思う。 パロムが、迷いもせず他人を傷つける姿など、彼女が見たがるはずがない。 ただ責任感から、自らの半身に戦いを強いているのだろうか。 それとも。 『あなたはそんな人じゃないわ』 弟のそんな姿を、思い描くことさえ出来ないのだろうか。 絶対の信頼を尊いと感じながら、それは今のパロムにとって、救いにはならないだろうこともセシルにはわかっていた。 魔法がいかに容易く人を傷つけるか、邪悪ならざるものの命をも、容赦なく奪ってしまいかねないものなのか、幼い天才黒魔道士は、見せ付けられたばかりなのだ。 強大な力が落とす影に怯えるあまり、彼自身が持つ光さえ見失ってしまっている。 そして自分を信じられなければ、大きすぎる信頼は逆に、とらえどころのない、薄っぺらなものに思えてしまうものなのだ。 ついこの間までのセシル自身が、まさにそうだったように。 パロムは彼よりずっと聡い。そしておそらく、ずっと強い。ポロムの存在が、あの子にとってどれほど大きな支えとなるか、じきに理解するだろう。 けれどポロムもまた幼い。たとえ一時のことにせよ、自分の好意が届かないことで、傷つかずに済むほど大人ではない。 ならば、今のセシルにしてやれることは── 「ポロム、掴まって」 セシルはポロムを抱き上げ、肩の上に乗せた。 戸惑っていた小さな手が、しっかりと首に回されるのを待って、敷地を囲む塀に歩み寄る。 子供の目線では気づかない。壁の先に待つのは、どこまでも広く、大きな空。 「どうだい?」 「……すごいです」 肩の上で、ポロムが身を乗り出す。セシルの口元にも笑みが浮かんだ。

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示:
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。