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「五節 忠誠と野心6」(2008/08/24 (日) 09:37:18) の最新版変更点
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気付いた時の風景は先程と大して様変わりはしていなかった。まだ動ける。体の無事を確認し、辺りを見回す。
「みんな無事か!?」
一瞬、以前津波に襲われた記憶が思い出される。
ファブールからバロンへ向かう航路の際、魔物に襲われ、そのものの起こしたであろう津波に飲み込まれた。
結果、セシルは仲間と別れ、遠き地に流される事となった。苦い記憶が頭をよぎり、自然と仲間の安否が気がかりに思った。
「大丈夫だ!」
テラの強い声が返ってくる。見ればポロムとパロムも一緒だ。
(ヤンは……?)
「セシル殿……」
そう思い、新たに視線を逸らそうとすると、近くから自分を呼ぶ声がする。
「ヤン。良かった。無事か……」
「セシル殿は……大丈夫でしょうか?」
「ああ……僕はこの通り」
「違うのです……」
「え?」
体の無事を聞いてきたのだろうと思ったのだが……違うのか?
「あのものは王ではありませんでした……ならば本物の王はもう……」
それはセシルも承知であった。
「そして王を手にかけたのは、おそらくあの者でしょう……」
一息おいてゆっくりと告げる。
「セシル殿はそんな者、相手に戦えるでしょうか……という意味です」
おそらくは、最前のセシルが怒りを表したのを見て危惧したのだろう。
「此処は私達にだけ任しても……」
「いや、いい」
セシルはきっぱりと言った。
「そんな相手だからこそ自分で戦わなきゃいけないんだ。安心して……決して怒りに支配されたりは
しないから」
ヤンの心配する所はそこなのだろう。
「本当に倒すべき相手はまだ此処にはいない。それまでは」
「わかりました」
「セシル殿……」
ベイガンは意外と冷静な声で呟いた。
「くっ……見つかってしまったのか……」
テラの声が聞こえる。
「いや、彼は……」
激突する事を覚悟し、呪文の詠唱に入ろうとしたテラをセシルが制した。
見知った人物だ。説得してみる。
そう小声でテラに話すと、セシルはベイガンに向かう。
「ベイガン、今は引き下がってくれないか? 君も今のバロンがどうなってるか分かっている
はずだ」
言いながらもセシルに不穏な可能性がよぎった。
ベイガンはバロンの軍団の中でもかなりの重要な役所を占める存在である。
王がゴルベーザを重用しているのだ。レッシィの話だと王に対抗する者は次々と何らかの処罰が下され
ているとの事。
今の閑散とした城もその為であろう。
しかし、ベイガンが此処にいるという事は彼が王に忠誠を誓ったという事だ。
「君もゴルベーザに……」
カインの様に操られているのか。
ならば戦わなくてはならないのか……半ば諦めかけたその時――
「はははははーーーーーー」
ベイガンが笑った。城全体に聞こえるほどに大きく。