五節 忠誠と野心9

「五節 忠誠と野心9」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

五節 忠誠と野心9」(2008/08/24 (日) 09:38:44) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

甲羅の中から、人とは異なる色をした血が流れ出す。 「これで……」 一人セシルが呟くと…… 「あっという間でしたな」 いつの間にか近くにやってきていたヤンが驚きがちに言った。 「自分でも……驚いてるよ」 先程までの戦いの最中セシルには王を殺された怒りや悲しみが消えかけていた。 だからこそ、冷静に戦えたのだが…… 「でも、僕は、これで終わりとは思えないんだ」 カイナッツォは最後に含みを残した言葉を言おうとしたように、セシルには聞こえた。 それに、何かを大事なものを何処かに置き忘れていたような気分。更には、思い出さなければ いけないのに、全く思い出せないもどかしい気持ち。 その二つが混ざり合った気持ちがセシルを支配していた。 「気のせいだといいけど――」 そんなセシルの心配を打ち消すかのように豪快に扉を開ける音が聞こえてきた。
「ベイガン、今城にはどのくらいの兵がいる?」 セシル達は技師の詰め所に集まっていた。 詳しい情報をベイガンに聞くためには、あの場所は得策ではないであろう。 落ち着いた場所に一旦、腰を下ろし、其処で話そうと思いセシルはこの場所を思い立った。 何故この場所を選んだのか。 先程の場所から近かったというのもあるが、見知った人物と最後に話したこの場所という理由も あったのだろう。 いつもは技師達で賑わうこの場所もやはり、がらんどうとしていた。 未だ、技師達は残ってはいるのだろうが、意気消沈しているのは想像に容易かった。 この場所を一番賑やかしていた人物が、現在は牢にいるのだ。 当然、この場所もかつての賑わいを保つ事は出来ないのだろう。 「既に以前の軍団達は大幅に規模を縮小され、その中の殆どが行動できない状況です。今現在城の警備を 担当しているのは私共の近衛兵と後は……」 そこで一回口を潜めた。 「魔物達が城の警備にあたっています……」 驚きはしなかった。 カイポの時、リディアの引き渡しを要求してきた兵こそ人間であったものの、率いる兵は全て魔物であった。 ヤンと初めて出会った時、襲いかかってきた魔物は明らかに人の手が入ったものであった。 極めつけはファブール進行の折、攻め込んできた軍勢の過半数以上が魔物であった。 「驚きませんか?」 「既に何度かそう思わせる事態に出会っていたからね……それより……」 セシルは切り出す。 「僕は王に会いに行きたいんだ。そこまでの道はどうなっている?」 城内の構造は忘れもしない。しかし、ベイガンの言葉通り、魔物がうごめいているのであれば、 少し事情は変わる。

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示:
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。