五節 忠誠と野心11

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「じゃあ頼むよヤン」 ベイガンが駆けだし、それを追おうとする直前、セシルは言った。 「承知しています。セシル殿もお気をつけてください……」 「僕は大丈夫だ。王に会うまで決して倒れはしない。それに、ベイガンがついていてくれるから」 その事は一見してヤンよりもベイガンを評価しているとさえ感じられた。 無論、自分を信頼してないのなら、自分に牢まで行かせないだろうし、頼むよ等とは言わないだろう。 それは理解しているつもりだ。 「セシル殿……私はどうもあの男が信用できないのです……それどころかあの男、何か重大な事を企んで さえいつように思えるのです」 だが、自然と――不穏当に感じつつもヤンは敢えて口にした。 そして、セシルはそれに特に怒った様子もなく言う。 「確かに初対面では付き合いづらい相手だと思うよ。でも彼も今のバロンを変えようとしている その為に戦っていると信じているから」 「セシル殿……」 自分が聞きたかったのはそのような回答ではないのだが…… 「じゃあ……行ってくるよ。シド達を助けたら先に城から脱出してくれ。その後はシドの家で落ち合おう」 待ってくれ――そう口にしようとしたが……言えなかった。 「テラ達も気をつけてくれ」 最後にそう言い残し、セシルは去っていった。

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