五節 忠誠と野心20

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倒れ込んだ看守を通路の脇に寝かせた後、しばらく進むと、鉄格子が見えてきた。 「あれか……」 そう言って、懐から先程、看守から奪った、牢の鍵を取り出す。 「誰だ!」 急に声がする。 捕まった者達も此方にってくる影を察したのだろう。 「俺たちに何をするつもりだ!」 えらく、攻撃的な色を秘めている。長時間、閉塞とした場所に閉じこめられていたのだ。 自然と心は荒んでいったのだろう。むしろ、この者のように、まだ誰かと会話できる程の精力が 残っている者はまれに思える。 「私たちはあなた方を助けに来たのだ」 「何だと……」 ヤンの声に反応し、とらわれの者の一人から声が上がる。 「本当か……?」 「嘘ではないのか?」 「信じられん」 それに続くかのように明らかに疑いかかっている声がつぎつぎとあがる。 「でも……此処にいてもずっとこのままだわ。少なくとも今よりはましになるはずだわ」 と助けを受けようと言う声も上がった。しかし、その声は少なく、しばらくすると大多数の意見に 打ち消された。

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