五節 忠誠と野心23

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「この牢獄に入れられた時、私たちは、バロンの者に大きな憎しみを抱いたのです……おそらくは 残された民も同じ心境でしたでしょう……」 その推論は正解であった。この魔導士の知るところではないが、セシルが再来した時に住民は大きく迫害 する事となった。 「そして、バロンの者達が私たちと一緒に投獄された時、私たちは酷く嫌悪しました。傷つけられたもの も中にはいました。その者が獄中で苦しみ、中には異を唱え、そのまま処刑されてしまう者もいました。 そんな者達を見ていく内に私たちは、彼とて苦しんでいると……そう思ったのです。だから、者達を治癒し ていきました。彼らとて、同じ人でした……」 一旦言葉を切る。そして、隣の黒魔導士が続ける。 「思えば、俺たちは最初、相手と話す事すらしなかった。ただ、憎しみが増大するだけ……ですが、 それではいけなかったのです、例えどんな相手であろうと必ず、何処かに事情を秘めている。それを理解せねば ならなかったのです」 「かつて……テラ様が言った事でした。来る者は拒まず。私達はそれを忘れていたのだ!」 「そうか……だが……」 テラは口ごもる。それは……ミシディアに伝わる格言であった。

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