王――良く知り、一番知らないその人物がすわっているであろう玉座の間には近づくに連れ、
魔物の警備が強くなっていった。
そしてセシルの目的地が魔物達の守るべき場所であり、其処に向かうには激突は必須である。
ベイガンの手並みは想像以上であった。
もしかすると自分と同じ、否それ以上かもしれない。
そう思わせるほど完全な太刀筋であった。
勿論セシルとて、負けてはいなかった。続く攻防に的確に対処した二人にとって戦局は極めて
有利に働いていた……
少し前まで、王の間へと続く、扉が魔物達の影から除いた時までは。
その扉が見てた瞬間、急遽セシルの頭にはあるものが思い出された。
今朝方、見た夢。
内容は自分でも驚くほどすぐに記憶から消え去り、さらには、此処に来て、ベイガンとの再会した
事もあり、夢を見たという事実すら失念してたのであった。
しかし、思い出すどころか、その内容までもが蘇ってくるのは一体何故なのだろう?
あれは正夢になるのか……そしてそれがすぐそこまでやってきている……
一瞬ではあるが、そんな考えがよぎった。
そして、その考えは勢い余っていたセシルを、あっという間に戦意喪失させてしまうほどであった。
剣を持った腕はだらりとおろし、ふらつきながら壁にもたれた。
その姿はスキだらけである。
そんなセシルは相対する者、それも互いに勝利を駆ける者にとっては絶好に機会以外に
他ならなかった。
その者、つまりは魔物もそれに気づいたのか、ベイガンの方を相手にしていたものまでもがセシルに
標的を変えようとする。
通常ならばここまで、魔物は気づかないのだろうが、此処の魔物達は人の手が入ったもの。
おそらくはゴルベーザの手がかかったものである。習性だけで襲ってくる通常のものとは、比べものにならない
くらいに整った連携を仕掛けてきた。
当然、セシルも普段なら、どんな状況でも対処したはずだ。
しかし、今、不可解な出来事にすっかりやられていた。
誰かの制止する声。
それに……意を決した二人。
万事休すといった状況。
そこまで考えて首を振る。
声は複数であった。今は自分とベイガンしかいない……
ではあの夢は偶然で片づけられるものなのか?
考えるセシルにも魔物の攻撃は容赦無く迫ろうとしていた。
最終更新:2008年08月24日 10:09