「そこまでして何故勝利に拘る……?」
「貴様にも拘りくらいはあるだろう、その結果がこの力だったに過ぎん!」
三度の剣閃。
回避するにはもう後が無い……
突如、目前に爆炎と大きな音、そしてベイガンが後方に大きく吹っ飛ばす。
「大丈夫ですか!」
慌てるように駆け寄ってくる小さな影。
「ポロム……」
とすると先程ベイガンを吹き飛ばしたのはパロム……の黒魔法。
「今、治療しますから!」
言って、治癒の為の詠唱に入る。
程なくして、笑われた緑の安らかな光に包まれながらも思った。
「何故ここに?」
痛みがひいていく中で訪ねる。
「あいつは元から怪しいと思ってたのさ」
パロムが言う。
「それにあの人は……」
「何故分かった!」
遠慮がちのポロムの言葉を遮り、起きあがったベイガンが訪ねる。
その様子からはこの二人が考えた事がずばり的中したという事か。そしてベイガンはその事を
隠し通していると思っていた。
「臭いさ」
パロムが断言した。
「臭うんだよ。魔物の臭いがさ……あんちゃんは騙せても俺たちは騙せないぜ!」
「そう、お芝居ならもうちょっと上手くやるべきでしたわね。大きな振る舞いの割には詰めが甘いですわ。
もうちょっと考えるべきでしたね……それに……」
一旦、口調を休めて、城の曲がり角、西側からこの中央、王の間までの道筋まで引き下がる。
「力を手に入れたからと言ってあまりそれを見せびらかすものではないですわ……」
そう言って、角の方に手を引く。
そこから除かせた顔はセシルも知っていた。おそらくはこの状況を見ると、この場に全員が知っているのであろう。
「この人があなたの……正体を見たと言ってますわ」
擦り切れたエプロンドレスという出で立ち。
従順そうでありながら意志強さを感じさせる顔。
その娘を知っていたというよりは覚えていたといえばいいだろう。彼女とはそれくらいの会話しか交わして
いなかったのだ。
最終更新:2008年08月24日 10:11