五節 忠誠と野心42

戦いは長丁場になった。
セシルとベイガンの実力のほどは、殆ど一緒と言って良かった。
例え、魔物の姿に変わろうとも、セシルを圧倒する事は出来ないからだ。
だが、戦局はベイガンに傾きつつあった。
ベイガンはその手、怪物と化したその腕の左腕を広範囲に渡り、
展開させた。
下手に動けば、その腕に体を取られる事となる。しかし、回避だけでも体力を消耗する事となってしまう。
「どうした! セシル」
ベイガンは挑発しつつ、右腕を攻撃へと当てる。
セシルは特に何の返答もせず、黙ってベイガンを見据える。反撃のスキを伺っているのだ。
大きく旋回させてくる左腕を交わしさえすれば、一気に攻勢へと打って出られる。
ジリジリと続いた睨み合いの中、そう判断した。
「怖じ気づいたのか!」
一向に無反応なセシルにしびれを切らしたのか、やや荒削りり両腕を使い攻撃してくる。
今だ!
それを待っていた。一気に剣を持ち、ベイガンの傍らを剣と共に払い抜ける。
瞬時、ベイガンの片腕が宙を舞った。先端にある表情が微かに悶絶したように感じたのはセシルの
気のせいか。
「あ……ぐぁ!」
さすがにこたえたのか。ベイガン自身も痛みを訴えるかのような小声を漏らす。
それと同時に、わずかに体躯が揺らぐ。
もう一度だ……
更に、振り返りざま背後からもう一つの腕に一撃。
手応えを感じさせる太刀の重み。剣撃の鋭い音と共に、その腕も地にたたき付けられる。
「これで……」
その戦果に充分なものを感じたセシルは、背後から、元の位置へと走り去る。
「勝負あったか……」
あの腕さえ無くしてしまえば大分楽になるだろう。
が……振り返り、声を発した瞬間に見た光景に驚かざるを得なかった。

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最終更新:2008年08月24日 10:12
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