戦いは長丁場になった。
セシルとベイガンの実力のほどは、殆ど一緒と言って良かった。
例え、魔物の姿に変わろうとも、セシルを圧倒する事は出来ないからだ。
だが、戦局はベイガンに傾きつつあった。
ベイガンはその手、怪物と化したその腕の左腕を広範囲に渡り、
展開させた。
下手に動けば、その腕に体を取られる事となる。しかし、回避だけでも体力を消耗する事となってしまう。
「どうした! セシル」
ベイガンは挑発しつつ、右腕を攻撃へと当てる。
セシルは特に何の返答もせず、黙ってベイガンを見据える。反撃のスキを伺っているのだ。
大きく旋回させてくる左腕を交わしさえすれば、一気に攻勢へと打って出られる。
ジリジリと続いた睨み合いの中、そう判断した。
「怖じ気づいたのか!」
一向に無反応なセシルにしびれを切らしたのか、やや荒削りり両腕を使い攻撃してくる。
今だ!
それを待っていた。一気に剣を持ち、ベイガンの傍らを剣と共に払い抜ける。
瞬時、ベイガンの片腕が宙を舞った。先端にある表情が微かに悶絶したように感じたのはセシルの
気のせいか。
「あ……ぐぁ!」
さすがにこたえたのか。ベイガン自身も痛みを訴えるかのような小声を漏らす。
それと同時に、わずかに体躯が揺らぐ。
もう一度だ……
更に、振り返りざま背後からもう一つの腕に一撃。
手応えを感じさせる太刀の重み。剣撃の鋭い音と共に、その腕も地にたたき付けられる。
「これで……」
その戦果に充分なものを感じたセシルは、背後から、元の位置へと走り去る。
「勝負あったか……」
あの腕さえ無くしてしまえば大分楽になるだろう。
が……振り返り、声を発した瞬間に見た光景に驚かざるを得なかった。
最終更新:2008年08月24日 10:12