「さて、お喋りはここまでだ!」
一時的に止まった戦いを、始める合図。見計らったかのような、ベイガンの怒声が辺りをうった。
「まずは……その二人から始末させてもらおうかな……」
怒声の次の声は、冷徹であった。
対象を変更した、両腕はパロムとポロムへと迫ろうとする。
「やめろ!」
叫び、その間にセシルは割って入る。
「がっ……」
どちらともつかぬベイガンの腕が、大蛇状のそれの牙がセシルの脇腹へと食い込む。
鋭いその牙は鎧をも食いちぎろうとする。
「なんと……庇うのか。ならば良い。お前から……」
そう言って、更にもう片方の腕をもセシルへと向かわす。
途端、セシルに痛みが、今以上の痛みが襲おうとしていた。
「う……ん」
セシルは拍子抜けする羽目となった。
予期した痛みがこない。確かに、新たに向けられた、牙の攻撃の感触はある。
だが、その痛みが大して堪えない。
「これは……」
セシルとベイガン。どちらともなく声が上がる。
「…………」
つまりはベイガンにもこの状況は予期していなかった。
「何をやっとる! 早く攻撃せんか!」
「あ……はい!」
聞こえた声に何故か律儀に答え、セシルは手にした剣を振るう。広範囲に向かって斬撃を払い、
一気に、二つの腕を切り落とす。
「ぬ……おぉ」
さすがにベイガンも堪えたのか。呻き声を上げて後ずさる。
それを一瞥した後、セシルは声の方向に向き直る。
「助かったよ」
最終更新:2008年08月24日 10:15