五節 忠誠と野心46

「さて、お喋りはここまでだ!」
一時的に止まった戦いを、始める合図。見計らったかのような、ベイガンの怒声が辺りをうった。
「まずは……その二人から始末させてもらおうかな……」
怒声の次の声は、冷徹であった。
対象を変更した、両腕はパロムとポロムへと迫ろうとする。
「やめろ!」
叫び、その間にセシルは割って入る。
「がっ……」
どちらともつかぬベイガンの腕が、大蛇状のそれの牙がセシルの脇腹へと食い込む。
鋭いその牙は鎧をも食いちぎろうとする。
「なんと……庇うのか。ならば良い。お前から……」
そう言って、更にもう片方の腕をもセシルへと向かわす。
途端、セシルに痛みが、今以上の痛みが襲おうとしていた。
「う……ん」
セシルは拍子抜けする羽目となった。
予期した痛みがこない。確かに、新たに向けられた、牙の攻撃の感触はある。
だが、その痛みが大して堪えない。
「これは……」
セシルとベイガン。どちらともなく声が上がる。
「…………」
つまりはベイガンにもこの状況は予期していなかった。
「何をやっとる! 早く攻撃せんか!」
「あ……はい!」
聞こえた声に何故か律儀に答え、セシルは手にした剣を振るう。広範囲に向かって斬撃を払い、
一気に、二つの腕を切り落とす。
「ぬ……おぉ」
さすがにベイガンも堪えたのか。呻き声を上げて後ずさる。
それを一瞥した後、セシルは声の方向に向き直る。
「助かったよ」

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最終更新:2008年08月24日 10:15
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